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物事の「つながり」を意識する〜システム思考〜 【米倉 博彦】

 (この記事は、福岡県中小企業団体中央会が毎月発行している「NEWSふくおか」2012年3月号に掲載した記事を、許可の上、一部修正を行い転載したものです)

「論理思考」や「ロジカルシンキング」がビジネスに必須なものと言われるようになってずいぶん経ちます。物事をその場その場で感情的に判断するのではなく、データを分析したうえで論理的な結論を出すことは、コンサルタントとして活動する上で非常に重要な技術と言えます。

 

ロジックツリー

論理思考で使う道具は様々ですが、最もポピュラーなのが「ロジックツリー」です。これは、物事の要素を細かく分解して問題を解く考え方です。余談ですが、「分析(アナリシス)」の語源は「分ける」という意味だそうです。(図1)

 

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図1:ロジックツリー

 

 

論理思考の弱点

論理思考はシンプルかつ強力な道具ですが、弱点もあります。図1をもう一度見てください。売上高は、まず数量と価格に分けられています。しかし、数量と価格はバラバラには動きません、そこには関連があります。一般的に、価格を下げれば販売数量は増えますし、逆に価格を上げれば販売数量は減ります。ロジックツリーでは、要素(ここでは数量と価格)の間にある関係を表すことが出来ないのです。(図2)

 

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図2:ロジックツリーでは関係を記述できない

 

 

 

また、数量や価格は時間とともに変化します。ロジックツリーに代表される論理思考の道具では、時間の概念を表すことも困難です。

論理思考は、ある時点での出来事を分析することはできますが、様々な要素が関連し、時間と共に状況が変化するような現実社会の状況ではうまく機能しなくなります。

 

システム思考とは?

今回紹介する「システム思考」とは、論理思考の弱点を克服した思考法です。

道具としては主に「ループ図」と呼ばれるものを使います(図3)

 

 

loop-diagram

図3:ループ図

 

 

ループ図は、要素とそれを繋ぐ矢印からできています。

どこからスタートしても構いませんが、まずは図3の左にある「低価格化」から見ていきましょう。

(1)商品を低価格にすると、一般的に(2)マーケット・シェアは上昇します。すると、当然ですが(3)販売数量は増加します。販売数量が増加すれば生産量も増えます。すると(4)規模の経済性が働き、商品一個当たりの(5)原価が下がります。すると、(1)さらに商品を低価格にすることができ、好循環が続くことになります。

 

ではどこまでも価格が安くなるのかというと、もちろんそんなことはありません。実際には、低価格化を進めすぎると、いずれは(6)ブランドイメージが低下し、シェアの増加に歯止めがかかるでしょう。(図4)

 

 

 

 

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図4:ブランドイメージの低下を加えたループ図

 

 

ループ図を書くと、物事の相互関係がはっきり見えてきます。そして、ループの中のどの場所に手を加えれば(要素を追加する、要素を取り除くなど)、好循環を生み出すことができるかが明確になります。

 

余談ですが、システム思考の基本理念の一つである「悪いのは人ではなく、システムである」という言葉に、若い頃の筆者は非常に感銘を受けました。この考え方は私が仕事を行う際の土台となっています。

 

システム思考を仕事に活かす

システム思考を実行するためには特別な道具は必要ありません。ノートとペンがあればいつでもどこでもループ図を書き、自分を取り巻く物事の「構造」を明らかにすることが出来ます。

 

目の前の仕事に追われる毎日。仕事の量が多すぎるのか、または自分の能力がないのだろうか・・。硬直化した組織、社長さえ変われば、上司さえ異動すれば・・・本当でしょうか?

悩むのをいったん止めて、ループ図を書いてみましょう。もしかしたら、問題は人ではなく、システムにあるのかもしれません。そして、ほんの少しシステムの「構造」をいじるだけで、すべてが上手くいくようになるかも?

 

 

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本稿では、システム思考のほんのさわり部分を紹介しました。システム思考についてもっと詳しく学びたい方は 「システムシンキング入門(西村行功著、日経文庫)や、「もっと使いこなす!システム思考教本(枝廣淳子・小田理一郎、東洋経済新報社)をご一読ください。

 

米倉 博彦/flowthink

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