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チェックリストの活用【米倉 博彦】

(この記事は、福岡県中小企業団体中央会が毎月発行している「NEWSふくおか」2012年5月号に掲載した記事を一部修正の上転載したものです)

 

 

どんな仕事をしていても、チェックリストを作成する機会はあると思う。

新人の指導、業務の引き継ぎ、自己チェック用など・・・今回は、簡単なようで意外と奥が深い「チェックリスト」の作り方や使い方について説明する。

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そもそもチェックリストって

短い文章とそれに対する「はい」「いいえ」といったチェック項目がついたもので、単純だが強力な道具である。

医療や高層ビルの建築、航空機の操縦など、ひとつのミスで人命が失われるような仕事では必ずといっていいほど作成され、活用されている。

 

チェックリストを作成する際のポイントは以下の通りである。

1)見逃される可能性が高いもので、見逃しを防ぐ手立てが不十分なもの

誰が作業しても見逃すことのないようなわかりやすい項目はわざわざチェックリストに載せる必要はない。また、張り紙などの簡単な手段で見逃しを防ぐことができるのであれば、これもチェックリストに載せる必要はない。

 

2)具体的な行動を促すものであること

項目を確認したとき、どういう行動をすればよいか具体的にわかるものでなければならない。例えば「会議室左奥にある配電盤の右から3番目のレバーを下げる」といった項目は具体的だが、「ブレーカーを上げて停電から回復する」では、知らない人が見たら何をしていいかわからない。

 

3)チェックの基準が明確であること

「はい」「いいえ」の項目を選択する基準が、誰がやっても同じになるようにしないといけない。よくアンケートであるような「理解できた」「少し理解できた」「わからない」「少し理解できなかった」「理解できなかった」のような選択肢だと、人によって回答の基準があいまいになるのでチェックリストとして活用できない。

なお、チェックリストの項目は最大でも9個程度に抑えるべきで、項目が多すぎる場合はチェックリストを複数に分けることを検討した方がよい。

 

自分の仕事は複雑すぎて、チェックリスト化できない?

筆者は経営コンサルタントであり、中小企業の業務改善を行うためにその企業の社員にチェックリストの作成をお願いすることがある。そのときほぼ100%言われるのが、「当社の業務は特殊で、チェックリストや業務マニュアルなど作成できない」という言葉である。

もちろん、実際にはそんなことはなく、いざ取り組んでみれば意外に簡単にできてしまう。ただ、営業の仕事などは、取引先や顧客の都合にも影響されるなど予定通りに仕事が進むわけではないので、業務の「見える化」は難しいと思うのも仕方がないだろう。

しかしそれでもチェックリストは作れる。仕事の順番は複雑だが、その中でもひとかたまりの仕事(例:見積もり作成、取引先との商談)などはあるはずなので、それらの部分毎にチェックリストを作ればよい。

仕事全体のチェックリストを作るのではなく、仕事を部品に分けてそれぞれに対してチェックリストを作成するのがポイントである。

 

 

 

問題を分割して、チェックリスト化

 

 

マニュアルとチェックリストの違い

マニュアルや教科書といったものとチェックリストは違う。チェックリストはマニュアルより簡素にすべきで、全ての業務について書く必要はない。

チェックリストは、よく間違える箇所やミスが重大な問題になるような箇所に関してのみ作成すればよい。たとえば誰も間違えないような項目をわざわざチェックリストにして毎回「はい」にレ点を入れるのは時間の無駄だし、記入する人も「こんな作業意味がない」と思いだんだん適当になってしまい、チェックがおざなりになってしまうだろう。

 

チェックリストの限界

チェックリストで対処できるのは、以前経験したことや決まり切った手順のあるものだけである。突発的な出来事や、経験したことのない問題にはチェックリストは効果がない。

アメリカのある建設会社は、通常の業務はチェックリストで管理しつつ、トラブルに対処するために毎週決まった時間に必ず関係者を集めてミーティングを行っているそうだ。チェックリストで対処できない問題は、関係者間のコミュニケーションで解決できるようである。

 

それでも使わないのはなぜ?

 チェックリストを有効に活用している企業はそれほど多くない。何故だろうか?正直なところ、チェックリストは手間がかかるし面白いものではない。それもあるが一番大きな問題は、チェックリストなんて使うのは初心者や仕事のできない奴でありそんなものに頼るのは恥ずかしいという固定観念なのかも知れない。

航空機のパイロットや医者といった、優秀な人達はむしろ積極的にチェックリストを活用しているのだが。

 

まとめ

チェックリストを使うことで、日々の定型的な作業で起きるささいなミスをほぼゼロにすることができる。その分、企画書の作成や他社との交渉といったよい難しい仕事に集中することができるようになるだろう。

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ささいなミスが取り返しの付かない結果を招くことは、どんな業界でも起こる可能性がある。その際、「社長が悪い」「担当者が悪い」というだけで済ませてしまったら、いつかまた同じミスが繰り返し起きることになる。

チェックリストは小学生でも使える簡単な道具だが、仕事の「スピードと正確さ」を劇的に改善するものである。ぜひ一度真剣に取り組んでみてほしい。

 

参考書籍:「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」アトゥール・ガワンデ著、普遊舎刊

 

 

【米倉 博彦/フロウシンク(http://flowthink.jp)】

 

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