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Optiontownの売り方 【古賀 克之】

Optiontownは、航空券を予約した人に対して、ビジネスクラスへのアップグレード権や希望するシートの予約権(隣が空席/窓側/通路側/機体前方など)をユニークな方法で販売するサービスである。現在、13の航空会社と提携している。Vietnam Airlineも提携先の1つであることから、2013年1月、福岡=ホーチミンのフライトで実際に利用してみたのだが、そのビジネスモデルが興味深かったのでご紹介したい。

 

 

エコノミークラスの格安航空券をVietnam AirlineのWebで予約&購入すると、予約内容を通知するE-mail(差出人はVietnam Airline)に、Optiontownが提供する各種オプションのオファーが記載されていた。オプションには、前述のように様々な種類があるが、今回はビジネスクラスへのアップグレードを購入対象とした。

 

 

購入希望者は、まずOptiontownに自分のフライト(エコノミークラス)の予約情報を登録する。次に約3ユーロ(数百円)の手数料と、ビジネスクラスへのアップグレード料金(航空会社の正規販売料金よりも25%以上安く設定)の合計額をOptiontownに支払う。この時点で既に料金はOptiontownに支払済みだが、実際にビジネスクラスにアップグレードできるかどうかは、フライトの4時間〜72時間前まで確定しない。Optiontownが販売するのは、正規に購入されずに余ったビジネスクラスシートであり、これを出発の直前に事前に約束した安値で販売するのだ。もし、ビジネスクラスシートが余らず確保できなかった場合、支払済みのアップグレード料金の全額が返金される。約3ユーロの手数料は返金されない。Optiontownは約3ユーロで「正規料金よりも安くアプグレードできる可能性」を販売しているとも言えるだろう。もしくは、Optiontownは航空会社が余った価値(ビジネスシートや隣が空席のシート)を安値で売りさばく手伝いをしているとも表現できる。

 

 

ホテルでも、直前に空き部屋を安く販売するビジネスモデルがあるが、掛け捨ての手数料を設定し、事前にその権利を販売している点が少し異なるように思う。フライトの4時間前とは、国際線の場合チェックイン手続き開始まで残り2時間のタイミングである。アップグレードできたかどうかはメールで利用者に通知される。カウンターでそのメールを見せることで、スムーズにチェックインすることができた。今回は幸い、福岡=ホーチミンの往復ともビジネスクラスシートを買うことができた。値段は正規料金の数分の一だった。

 

 

利用者とOptiontownとの間のやり取りは、すべてネット上(WebとE-mail)で完結している。おそらく、Optiontownと航空会社とのやり取りも、すべてオンライン/Web化されているだろう。ITシステムによってオペレーションを無人化していることから、「隣が空いているシート」や「通路側」など単価の安いオプションも商品にラインナップできるのだろう。近年、Optiontownのようなシステムを構築&運用するコストは、クラウド的なインフラの発達と技術革新によって、非常に安くなっている。このようなビジネスを実施するにあたっては、ビジネスモデルの設計と業務提携先の獲得が最大の課題であり、システムの構築と運用については大きな課題ではないだろう。この観点では、今後、他の様々な分野についても、同じような「権利を少額の手数料で事前販売する」ビジネスモデルが展開される可能性が高いだろう。

 

 

Optiontownのやり方で、もう1点興味深かったのは、アップグレード料金を事前に徴収する点である。権利を獲得した後で決済を迫る仕組みでは、「やっぱり買わない」と支払いを拒否してキャンセルする利用者が出るだろう。先に支払いをさせておけば、権利確定後の処理は極めて単純である。これによって、提携先航空会社がビジネスクラスシートを安値で放出する判断を出発の4時間前まで遅らせ、正規料金からの値下げ幅を拡大することができる。航空会社にとっても、利用者にとってもハッピーなのだ。

 

 

一時期、ITを利用した新たな販売方式・価格決定の仕組みとして、グルーポンなどの共同購入サービスが話題になった。一過性のブームとして終わったり、新たな問題を発生させたりもするだろうが、これからもITによる革新的な販売形態/ビジネスモデルが登場し、着実にBtoCやBtoBの販売方式や価格決定の仕組みを変革していくだろう。ITベンチャーではない中小企業の場合、Optiontownのような大規模なビジネスを展開することはないと思うが、自社の商品やサービスの販売方式や価格決定の仕組みが本当に顧客にとって最適なものになっているのか、革新的な販売方法を実現できないかなどについて考えてみてはいかがだろうか。

 

 

【古賀 克之/Class K

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